全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、若年性特発性関節炎(JIA)や炎症性腸疾患(IBD)罹患女性患者の妊娠、出産を考えた治療指針に関して、ご説明いたします。
生後の新生児のケアについて留意すべきことは何か?
推奨文
- 抗SS-A抗体を有するSLE合併妊娠・RA合併妊娠では、新生児ループスに留意する。(推奨度:A/同意度9)
- 母体が妊娠中に生物学的製剤(抗体製剤)を使用している場合、その影響が生後数か月残存している可能性があり、児の生ワクチン(BCG、ロタウイルス)の接種において注意が必要である(CQ10を参照)。(推奨度:B/同意度8)
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1)全身性エリテマトーデス(SLE)
SLE合併妊娠では母親の自己抗体の中でIgG(抗SS-A抗体)が胎盤を介して、児に移行し、児に母体と同様のSLE様症状を呈することがある(新生児ループス)。発症時期は、出生直後から生後3か月頃であり、母体由来のIgGが消失する生後半年程度で軽快する。症状として完全房室ブロックや,皮膚症状,汎血球減少がある1)。完全房室ブロックは不可逆的な障害であるが,心症状以外の症状は一過性で,可逆的な障害であり生後1年までに自然に治癒する2)。
<参考文献>
- 1) Boh EE. Neonatal lupus erythematosus. Clin Dermatol. 2004;22:125-128.
- 2) 自己抗体陽性女性の妊娠管理指針の作成及び新生児ループスの発症リスクの軽減に関する研究.厚労科研報告書2013.3
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2)関節リウマチ(RA)、若年性特発性関節炎(JIA))(3)炎症性腸疾患(IBD)(クローン病(Crohn’s Disease;CD)、潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis;UC))
母体IgG分画の自己抗体は存在しないため、児は母体と同様の症状は呈さないが、母体に投与する薬剤の影響は考慮する必要がある。ただし、RA合併妊娠において抗SS-A抗体を有する場合は、SLE合併妊娠の項目に記載の如く対応が必要である。母体が妊娠中に生物学的製剤(抗体製剤)を使用している場合、その影響が生後数か月残存している可能性があり、児の生ワクチン(BCG、ロタウイルス)の接種において注意が必要である(CQ10を参照)。